「関係性の美学」の25年越しの日本語訳刊行を記念して、美術批評家の黒瀬陽平氏をゲストに迎え、トークイベントを開催します。
1998年に刊行された「関係性の美学」は、フリーランスのキュレーターとして、また様々な媒体に寄稿する批評家として、さらにはインディペンデントな出版社を立ち上げ、批評誌を刊行するオーガナイザーとして、幅広い活動を展開していたニコラ・ブリオーが、同時代/世代のアーティストたちの活動に通底する「美学」を理論と実践とのもつれ合いの中で言語化する試みでした。
同書の冒頭でブリオーが指摘するように、当時のアートをめぐる言葉は、アカデミックな精緻さと引き換えに、現実に流通するアートや文化の実践から遊離していたため、同時代のアーティストたちを取り上げつつ、同時にその意義について表現する「関係性の美学」が一種の開放感をもたらしたことは、それが多くの言語に翻訳され、若いアーティストや学生、キュレーターなどを中心に広く読まれたことから、想像に難くありません。
その一方で、「関係性の美学」は多くの批判にさらされました。とりわけ日本国内においては、原書はおろか英訳すら十分に読まれ検討されることなく、「関係」という言葉の印象や「古典的」といってもよい芸術の理解に基づく言説が繰り返され、「関係性の美学」の標準的な解釈として固定されてしまった感があります。2025年の現在、「関係性の美学」について考えることは、過去の動向を振り返り、美術史の一頁を確認することでしかないのでしょうか。
このイベントでは、「関係性の美学」を、九〇年代に生じ、二〇二〇年代に一つの完成を見たアートの(そしてその外部の諸領域の)大きな変化のなかに位置づけ、現在における「関係性の美学」の可能性を呈示したいと思います。
全体は二部構成となり、前半では、本書翻訳者の辻が『関係性の美学』についての読解を行い、後半ではそれを受け、コンテンポラリー・アートの30年について黒瀬氏との対話を展開します。
登壇者
辻憲行(『関係性の美学』翻訳者)
黒瀬陽平(美術批評家)
開催日時:
2025年5月5日(月)
15:00-18:00
会場:
Sculpture Center
〒116-0014 東京都荒川区東日暮里2丁目10−7 第二コーポ嶋田
東京メトロ日比谷線 三ノ輪駅 2番出口から 徒歩約8分
参加費用:
3000円
※事前にチケットをご購入の上、ご来場ください。
チケット:
お問い合わせ:
芸術係数 info@artcoefficient.net
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